食と音楽と

良い食事と良い音楽は人を幸せにするって本当かしら? 46歳でADHDと判明後解雇され無職となった今を綴る

食品の医薬品的標榜〜なぜ食品に薬のような効果効能を求めるのか〜

前職勤務時、例の代表のがアンチ食品添加物論者と書いた。

今日はこの代表の驚きのエピソードを思い出したので書き出してみます。

 

それは、自社商品に「美肌に効果あり」と医薬品的標榜をパッケージに記載(正確には日本語ラベルのキャッチコピーにその文言を載せたい)というもの。

昨年頃から、いわゆる大ヒットYouTuberが何の根拠も無く一般食品を「がんに効く」「美肌に良い」などと宣伝し、その取扱者がとばっちりを食って欠品状態に陥ることが定期的に発生している。

 

私が在職時に経験したのは、中国の微発酵茶である白茶が、某Mンタリ〇トDに「美肌によい」と取り上げられ、引く手あまたとなってしまったもの。

前職はオーガニックの白茶を取り扱っており、需要バランスが崩れると一気に在庫切れを生じ、通常の取扱い店舗様に迷惑をかけることになる。

 

特にEC(eコマース)の雄であるAmazon楽天爽快ドラッグ)等に納品していれば、このような騒動が発生する度に欠品に陥り、結果ペナルティを科される。弊社もそれでは堪らないと、エアー(航空貨物)により緊急発注を依頼し、その供給に追いつこうと努力をする。しかし、その貨物が到着し、通関を経た1ヶ月後にはブームが無くなり、結果過剰在庫としてズブズブと倉庫に眠ることになるのだ。もちろんECサイトからは既に遅しでキャンセル済み、納品不可。

 

そのような騒動が発生する度に、何も学習しない前職経営陣は、「売れるときに売れ」と、代表命令で動いたのだが、毎度のこと品質管理担当者レベルからすれば「いい加減にしろよ」とため息しか出なかった。

 

従来は、過剰在庫状態で時を過ぎるのを待つだけであったが、この時だけは違った。社内のとあるオーガニック健康オタクっぽい営業担当女性が、「イギリスに美肌効果のエビデンスが記載されている論文がある」と営業会議で大騒ぎをしてしまい、それに影響された代表が

 

「機能性表示食品を消費者庁に申請しましょう!」

 

もちろんそういう面倒くさい、かつ専門性が生じる時だけ、品質管理に命令が下る。

「ふざけんな」状態でしたよ、ホント。

 

会議の場で騒ぐ気力のない私は

「過剰な期待はしなでくださいね」

と一言言って終了。

 

その件を持ち出した営業担当に、論文が記載されているwebページを尋ねたところ「忘れた」、こちらがそれらしきHPを見せても「わからない」といきなり逃げる姿勢に転じたときには殺意が出た。発言に責任持て、ふざけるな、と。そもそも論文を執筆したことがない人間に、論文であるか否かなんてわからないというもの。

 

業務のほとんどを、エビデンスが掲載された論文を探すこと数日、いくつか発見した論文について通読したところ、エビデンスとは程遠い、アンケート調査に近い論文(それも、オーガニック食品関係論文)で全く根拠がない、使えない論文であることが判明。

 

そのコピーを携え、代表に説明。

かつ、「機能性表示食品」の申請について1から説明をしたところ、「それでも申請しろ」という命令しか下りず。

 

最終的には、論文査読を依頼する専門の博士号所持者を複数探しだし、その報酬を用意しないといけないこと、かつ査読できても満たないと判断されたら却下となりますが、そこまでしてもやりますか?、の一言で中止に決定。

結局カネかよと改めて殺意(すみません)。

 

このような騒動を発生する度に振り回される代表の知性には呆れてしまうが、その「知性」をはじめ、なぜ、食品の専門家であると言っても過言ではない人間が、食品に効能があると信じてしまう理由を考えてみようと思う。

 

(理由その1)食品であれば「なんとなく安心」であるから

 

つまりのところ、薬は有害で食品は無害であると信じる究極系ではないか、ということ。

薬についても、副作用ばかりを悪玉として非難している点が非常に始末が悪い。

リスクとベネフィットを知らないのか?

こういう人は意外と漢方薬信者だったりするのも何で?なのであるが。

もちろん漢方薬にも副作用は存在します。

 

(理由その2)食品は天然なので有害でないから

 

とんでもの最たる理由。化学物質嫌いあるある、である。

逆に言うと、「薬は人工だから人体には有害」とも。

数日前に記載した、放射性物質が人工か天然かで有害性が違う、という、とんでも理論とほぼ同じ。

 

「海水は無害だが3.4%の食塩水は有害」

 

ということもできる。

天然だから無害という単純さに毎度驚くが、それじゃあ、ボツリヌス毒素やふぐ毒は天然なのにとも思う。

 

結局、食品は天然素材からできていて身体に優しく人体に有益だから、と言いたいのであろうか。

そして食品には身体に良い影響を及ぼす未知の効果があるかもしれない、とも。

 

だがどうだろう。炭水化物ばかり含まれている食品を過剰に毎日摂取したら栄養バランスを崩して病気になるように、「毒性は摂取量によって決まる」という答えが自ずと導き出せるような気がするが、これまでそのような回答を「このような人たち」からもらったことがない。

 

有害性は「入っているか否か」ではなく「摂取量で決まる」と声を大にして言いたいのだが。こんなひとたちに期待するだけ無駄ですかね。

 

(理由その3)食品に対する過剰なまでのこうあってほしいという願望

 

もう、ここまで行くと一種の宗教みたいなものと感じるが、食品を取り扱う社内にいると、プロであるべき社員からも、お客様からの電話等からもこれを感じることがしょっちゅうある。

 

「食品中には未知の物質が含まれていて薬のような劇的な効果があるかもしれない」

 

そんな言葉が聞こえると、

 

「いやいや、それは食品中に含まれる栄養素が分離され、特定され、抽出されて研究され、人体で有益であることが証明された結果があるから言えるのであってだな」と自分突っ込みを入れていまう訳で・・・。

「それがわかれば抽出して合成して医薬品に使うよ」と併せて突っ込みます。

 

食に携わっておおよそ20年、私が経験したところからの結論はこういうったところでしょうか・・・。あとはオーガニック信者に触れるべからず。この世界に復職は絶対ないな、と。